和牛のいる生活

北海道で牛飼いの勉強中です。

肉牛農家は何を売る?

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こんばんは。
今日は、牛を飼っている農家がどのように収入を得ているかを紹介します。
「牛乳を搾る」または「太らせた牛を売る」だけではないんです。

現在日本で飼われている牛は「乳用種」と「肉用種」に分けることができます。
乳用種はその生乳を、肉用種はその枝肉を目的として飼われています。
ホルスタインを代表とする乳用種を飼い、生乳を搾る事で収入を得ているのが「酪農家」です。
一方、肉用種を飼っている「肉牛農家(畜産農家)」は、ちょっと複雑。
「一貫農家」「繁殖農家」「肥育農家」という3種類の経営形態があります。
肉牛業界は分業制と考えるとわかりやすいかもしれません。

  • 繁殖農家は、産院から高校卒業あたりまで。
  • 肥育農家は、素質のある高校生を集めて立派な身体に仕上げる道場。
  • 一貫農家は、産院から高校、道場も併設。

以下、少し詳しく書いてみます。

大きな違いは、自分の家で子牛を産ませるか、産ませないか。
まず、自分の家で子牛を産ませる場合は、お母さん牛を世話することになります。
お母さん牛に子牛を産んでもらい、将来のお肉を手に入れるわけです。
産まれた子牛を、大人になる一歩手前(8~10か月)で出荷するのが「繁殖農家」です。
なぜそんな中途半端な段階で出荷するのかというと、子牛を産ませて育てる技術と、たくさん肉が取れるように太らせる技術では、利用するエサや施設が大きく異なるためです。
大人になる一歩手前の牛は「素牛(もとうし)」と呼ばれ、素牛市場で売買されます(もちろん、生きた状態です!)。
自分の家で子牛を産ませない場合は、素牛市場から牛を買い、1年半~2年弱かけて太らせ、お肉になる段階で出荷します。これが「肥育農家」です。
自分の家で子牛を産ませ、お肉になる段階まで育てて出荷するのが「一貫農家」です。

このように、肉牛農家にはさまざまな経営形態があるわけですが、それぞれの経営形態にメリット・デメリットがあります。
繁殖農家は、出荷までのサイクルが早いけれど、しっかりした子どもを作らないと市場で買いたたかれてしまう。
肥育農家は、デリケートな妊婦さんを扱わなくていいけれど、市場で買ってきた以上の値段に仕上げないと利益が出ない。
一貫農家は、多少の問題児でも最後まで面倒を見られるけれど、幅広い知識や技術が必要。

さらに、酪農家で産まれた交雑種(ホルスタイン×黒毛和種)や乳用種の雄を市場で購入して肥育する農家もいます。
畜産業界に入るまで、肉牛を育てる人はみんな和牛を太らせて出荷していると思っていたので、「素牛」という考え方や分業制を知って驚きました。
ちなみに、乳用種は子牛を産まないと生乳を搾れないため、酪農家はみんな産院です。

私の牧場は一貫経営を行っているため、お母さん牛もいれば、お肉になる直前の牛もいます。
もしこれから肉牛業界に関わりたいと思う人は、自分がどのような経営をしたいか、どんな牛の世話をしたいかを考えてみるといいかもしれません。

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今日は雨降りのため、日中の作業はお休み。
7時半から16時くらいまで時間があるので、休日みたいなものです。
特に出かける用事もないので、家でのんびり過ごします。
みなさんもよい日曜日を。