和牛のいる生活

北海道で牛飼いの勉強中です。

飼養スタイルあれこれ

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牛を飼おう!牛舎を建てよう!と思ったときに、まず考えるのは「牛を自由にするか、しないか」ということです。

牛を自由にする場合は、以下の選択肢があります。
好きなときに好きな行動がとれるため牛にやさしい飼い方ですが、強い牛にいじめられてエサや水を十分に摂取できなかったり、個体管理をするのが難しかったりと、工夫が必要な点もあります。また、搾乳のたびに牛たちに搾乳施設へと移動してもらう必要があります。

  • 放牧
    屋外の牧草地に牛を放し、自由に過ごしてもらう方法です。
    北海道では冬に雪が降るため通年放牧が難しく、放牧主体の農家さんも冬は牛舎で牛を飼う必要があります。
    本州では24時間365日放牧で、牛舎は持たない(たとえばコチラ)、あるいは人工授精や搾乳のために牛をつなぐ簡易的な施設のみの農家さんもいるようです。
    放牧のメリットは、手間がかからないこと。エサを与える必要も、糞を掃除する必要もありません。牛たちの排泄物が土地を肥し、翌年食べる牧草になる、という循環可能なスタイルであるのも魅力的です。
    難点は、牛が何をどれだけ食べたかがわからないこと。牛が適切なエネルギーを摂取していなければ、十分な量の牛乳を生産することができません。放牧で牛を飼う場合は、牛たちが十分に牧草を食べ、水を飲み、休息できているかを確認することが必要です。

  • フリーバーン牛舎
    牛がすべてのスペースを自由に使うことができる牛舎です。
    牛舎のつくりとしてはとてもシンプル。
    牛たちが心地よく休息するために、おが粉や戻し堆肥などの敷料(しきりょう)が豊富に必要になります。
    パドック(運動場)を併設し、外との行き来が自由にできるように設計されていることも。
    肥育牛はたくさんエサを食べて効率的に太ってもらうため、フリーバーンを数頭単位の小部屋(牛房、マス、ペンなどと呼びます)に分けて育てることがほとんど。

  • フリーストール牛舎
    フリーバーン牛舎に「ストール」と呼ばれる1頭ずつの休息スペースを追加し、休息スペースと採食スペース、通路に分けた牛舎です。
    牛は採食スペースでエサを食べ、通路に排泄するため、休息スペースを清潔に保つことができます。特に乳牛は休息するときに乳房が地面につくため、休息スペースの汚染を防ぐことのできるフリーストール牛舎が適しています。反対に、肉牛を育てる場合はあまりメリットがないかな、という感じです(探してみたらこんなのありました)。
    ストールのサイズや仕切りの形状を考慮せず、牛があまりストールで寝てくれない設計にしてしまうと、せっかくのメリットが活かされなくなってしまうため、慎重な設計が必要です。

牛を自由にしない場合の選択肢は、ひとつです。

  • つなぎ牛舎
    牛を1頭ずつ繋いで飼う牛舎です。ある程度動きは制限されますが、最大のメリットは個体管理がしやすいこと。1頭ずつ様子を見ながらエサの量を調節したり、治療したりすることができます。いじわるな牛にどつかれる心配もありません。(エサを横取りする牛はいるけど。笑)
    また、排泄をする場所も限られているため、牛の糞尿が落ちるところにバーンクリーナーと呼ばれる溝(トイレやごみ箱のようなイメージ)を配置することで、掃除も比較的容易に行うことができます。
    つなぎ牛舎で搾乳を行う場合は、搾乳機器と人間が移動することになります。
    牛が動ける範囲が限られるため、放牧やフリーストールと比較すると牛のストレスは多いかもしれません。発情兆候や異常行動が見つけづらかったり、牛床の状態をよくしないと肢が傷んでしまったり、というデメリットもあります。

農家さんは、これらをいろいろ考えて牛舎の設計を行っています。
牛の快適さだけでなく、管理する人間側の快適さも大切です。

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ここ数日は風が強く、気温よりも寒く感じます。
よく食べよく寝て頑張ろう!
おやすみなさい。