和牛のいる生活

北海道で牛飼いの勉強中です。

私は牛を嫌いにならない

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こんばんは。じめじめして夕立の降った十勝です。
写真は乾草をかぶってお休み中の子牛 笑
まだお母さんと同じ部屋にいて、うとうとしていたらお母さんの引きだした乾草が上から降ってきたんでしょうね。かわいい。

M牧場では、牛を見て「かわいい~」とつぶやくことができません。
いや、独り言ならいくらでも言っていいのですが、おかみさんのいる前で牛をかわいがることはできません。
なぜなら、彼女は「牛をかわいがるだけでは牛飼いはできない」という信念を持っているからです。
確かに、ただ牛を愛でていても肉牛農家として生活することはできません。
経済動物として牛を飼っている以上、命の灯を消す判断をしなければいけない時があります。トラブルなく出荷するためには昼夜問わずの対応も必要です。
牛の世話をするだけでなく、牧草収穫の作業や作業機のメンテナンス、牛舎の修理や掃除、経理など、さまざまな業務をこなす必要があります。休みもないし、体調が悪くても代わりはいないし、売り物である枝肉の相場は自力で左右できるものではないし、苦労の多い仕事です。さらに、就農にあたっては多額の借金をする必要があります。
生家でも牛を飼っており、物心ついたときから作業を手伝わされ、学校にいる時間が唯一牛から離れられて幸せだったと語り、嫁ぎ先も牛飼いで70年以上牛と生活しているおかみさんに言わせれば「今は牛かわいいネ~と思ってればいいかもしれないけど、そのうち牛かわいい、好きなんて言っていられなくなる」とのこと。
牛を飼う以外の選択肢がなく、生きるための手段として牛を飼ってきたおかみさんには「牛が好き」という理由で就農を希望する私が危なっかしく見えるようです。

でも。
曲りなりに7年くらい(おかみさんの10分の1ですが…)牛と向き合ってきて、学生時代にはビニール袋片手に牛糞を手に入れるべく走り回り、ルーメン液を全量採取し、4時間おきに24時間放牧地の草を摘み、草を食む姿をビデオ撮影して何回前足を動かしたかをカウントし、5分おきに行動を観察し、社会人になってからは(週一ですが)搾乳と牛舎作業をし、救えたかもしれない牛を見送り、日の沈んでいく牧草地で壊れた機械のかわりにフォークで牧草を集め、それなりに「酸い」の部分も見てきたつもりです。
それでも牛のことは嫌いにならなかったし、かわいいと思えます。
昔、母とドライブしていて牧場を見つけ、「あ!牛だ!」とテンションが上がっていたときに「あんた仕事であれだけ牛見てるのにまだ牛見てそんな風に思えるの?」と言われたことがありました。好きなものって、そういうものだと思います。

否応なしに牛飼いをしているおかみさんと、自らの意志で牛飼いを目指している私。
立場があまりに違うので異なる考えを持っていても仕方ないのですが、「牛をかわいいと思う気持ち」を否定されると悲しくなります。
幸い、夫は「かわいい」を共有してくれるので、もう少しの辛抱だなあ。
余談ですがおかみさんは曲解のプロで、これ以外も「あんたは仕事終わったら家に帰っておしまいと思ってるだろうけど~」「牧草収穫はただトラクターに座ってれば済むと思ってるだろうけど~」「肉牛はエサだけあげとけばいいと思ってるだろうけど~」など、私に対して一貫して「牛飼いに対して夢見てる女の子」像を抱いているらしく、反応に困るときが多々あります 笑
「いえっそんなことはありません!」と思うけど、私の態度からお花畑ガールの像が結ばれてしまっているのだから、地道に態度で示していくしかないですね。
今は牧場から車で数分のところに住んでいるので、夜間や明け方の分娩やトラブルに対応できないのが歯がゆいです。

誰になんと言われようが、私は牛が好き!
明日は月曜日、頑張りましょう~

($・・)/~~~