和牛のいる生活

北海道で牛飼いの勉強中です。

0509 / お別れ

こんばんは。今日は風が止んで、暑い1日だった。
一晩経って少し気持ちが落ち着いてきた。

◆5月9日(月)
休日はどうしても夜更かししてしまうので、朝から眠たい。
朝の作業で牛の寝床に敷くための麦稈ロールをほぐしているとき、フォークの先が何かに当たった。違和感をおぼえて視線を向けると黒っぽいものが見えている。
「何だろう?」と思った瞬間、ぞわりとする。そうであってほしくない、けれどそれは冷たくなった牛舎ねこ「けだま」だった。
思考停止状態で麦稈をのけ、亡骸を抱き上げる。下半身がつぶれてしまっている。転がってきた麦稈ロールにつぶされてしまったのだ。
基本的に、麦稈ロールは人間が転がさないと転がらない。ここ数日の間に私もロールを扱っていたので頭が真っ白になった。いつ起きた事故かは分からない。人間が関与しておらず、麦稈が勝手に崩れて重心が移動して転がったのかもしれない。本当のことは分からないが、私の不注意の可能性がゼロではない事実が重い。
しばらく呆然としていたが、やるべき仕事が残っている。けだまの場所を移動させ、のろのろ作業を終えた。
わざわざ報告することでもないかな、夫にだけ伝えようかな、と思っていたが親方もかわいがっていた猫だったし、何より私が黙っていられず上がり際に親方と夫に報告。

猫好きの夫も相当ショックを受けていた。けだまは妊娠していて、お腹のふくらみ具合をみるにもう分娩が近かったと思う。あんなにかわいい猫から生まれてくるなんて、どれだけかわいい子猫たちなんだろうと楽しみにしていた。
午前中、親方が簡単なお墓を作ってくれたのでお別れをする。

1日中気持ちが沈んでつらい。ほかの牛舎ねこたちが元気にしているのが救いだ。
写真をプリントして、お花を飾ろうと決めた。それが冒頭の写真である。
「誰が悪いわけでもないよ」とも言ってくれるものの、作業の分担上麦稈ロールを触ることのない夫が「かわいそうに」と言うたびに心がざわざわする。
どんなに後悔しても、けだまは戻ってこない。けだまとの思い出を糧に生きていくしかない。
いつかまた他の猫のかたちを借りて、けだまが牛舎に遊びに来てくれますように。

けだま。

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いろいろ言葉を並べてみても、どこかで信じたくない自分がいる。
それではまた👋