和牛のいる生活

北海道で牛飼いの勉強中です。

1009 / 悔しさ

こんばんは。5日間続いた全共が本日無事に閉会しました。
大きな事故やケガなく終えられてよかった。あとは牛ちゃんたちが無事に帰ってきてくれることを祈るだけ!

◆10月9日(日)
さて、いよいよ等級発表の日である。
「和牛のオリンピック」とも呼ばれる全共には、大きく分けて「種牛の部」と「肉牛の部」と呼ばれるふたつの審査がある。
「種牛の部」は生体で、「肉牛の部」はと畜後の枝肉の質で、和牛としての能力を競う大会だ。
さらにそれぞれの部がさまざまな条件によって1~8区+特別区(高校生・農大生による出品)に分けられている。おもしろいのは6区かな。和牛も競走馬と同じようにお父さんが重視されており、優秀な種雄牛を一か所にあつめて精液を採取し、それをストローに詰めて凍結して数多のお母さん牛に人工授精するというシステムになっている。
6区はそのお父さん牛の実力を競う区で、同じお父さん牛から生まれためす牛3頭セット(所属する牧場はばらばらでよい)+そのお父さん牛から生まれた牛の枝肉3頭セット、つまり同じお父さん牛から生まれた6頭の牛を評価して順位を決める。
すんごい和牛らしい見た目のよい牛をつくる能力があっても、肉用牛なんだから産肉性がなきゃダメよ、反対にいくら上等なお肉をつくれるお父さん牛でも、和牛としての見た目の良さや素質がある牛を産ませる能力が備わっていないんじゃあ上位には入れませんよ、というシビアな審査なのだ。それゆえ全共の花形ともいわれている。
あ、書き忘れていたけど全共は都道府県(性格には道府県)対抗のバトルである。

牛ちゃんが出場したのはセットではなく1頭で勝負の区。
7日に行われた審査を終え、この日はあらためての審査と等級発表だった。なんとかして上位に食い込みたい、牛ちゃんならやってくれるはずと夫は気合十分で臨んだと思う。
蓋をあけてみれば結果は思っていたよりも低い序列で、画面越しの夫は今まで見たことのないような表情をしていた。
もちろん悪い序列ではないし、これが実力なのだと思う。事実、上位の牛たちはびっかびかで貫録があり、きれいだった。こりゃ敵わないな、と思った。
けれど、チームのみんなに期待に応えられなかったんじゃないか、もっとやれたんじゃないか、という思いが渦巻いて本当にやりきれなかった。夫はとてもまじめな性格で、目標を与えられればそこに向かって真摯に取り組む。
ほんの2年前までほとんど縁がなかったのに、いきなり全国の舞台に立つことになって、牧草収穫をしながら、就農の計画を立てながら、「やること増えて大変だなあ」「こんなボロ牛がまさかねえ」という親方夫婦の声をBGMにしながら、身も心も削って頑張ってきたのだ。それがちょっぴりふがいない結果で終わってしまって悔しい。

さらに悔しいのが、やっとの思いで手にした結果は夫ではなく牧場に付与され、お祝いの言葉は夫の頭上を通り越して親方に飛んでいくことだ。
地道に努力してきた日々を私は知っているし、夫と牛ちゃんの紡いできた時間は変わらないのだが、いったい何のため、誰のために頑張ってきたんだろうと空しくなった。
それでも本当に多くの方に激励の言葉をかけてもらい、北海道チームの方々にはとても良くしてもらった。この経験が5年後の北海道全共に活きたらいいな。
あらためて、ありがとうございました。チーム北海道の頑張りに胸が熱くなった。

久しぶり、というか初めてこんなに純粋な感情の揺れ動きを経験した気がする。
勝負事とは無縁の世界で生きてきたからなあ。
牧場の作業にはあんまり身が入らず、コンビニで夜ごはんを買って帰宅。
シャワーを浴びてごはんを食べ、スプラをプレイして就寝。ぜんっぜん勝てなかった……

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慌ただしい日々もようやく終わりそう。嬉しいような、さみしいような。
それではまた👋