和牛のいる生活

北海道で牛飼いの勉強中です。

とんでも倫理観 / 渡辺淳一「リラ冷えの街」

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こんばんは。1日雨ふりだった十勝です。
写真は先週訪れたサーキットでのイベント。初めて生でドリフト見ました。

今日は一歩も家から出ず、ひたすらダラダラしました。
9時過ぎに起きて朝ごはんを食べ、昼過ぎまでお昼寝 笑
タブレットで雑誌を眺めたりスマホのゲームで遊んだりして、
夕方から冷蔵庫の中身を「すぐ使える仕様」に。
野菜を切り、5本200円(!)で売っていたとうもろこしを茹でて冷凍し、糸こんにゃくのきんぴらを作り、にんじんのオリーブオイル炒めを作り、夕飯用のラム肉(半額)を漬けダレに漬け(少なすぎて全然味がせず、焼肉のたれで食べました 笑)、きのこを切って冷凍し、油揚げも切って冷凍し、これでとりあえず当面は乗り切れそうです。

最近はメインのお肉だけ決めて余裕があれば前日に献立を考え、ごはん+味噌汁+主菜+副菜の4品で安定してきました。
前置きはこれくらいしにて、今日は渡辺淳一「リラ冷えの街」の感想を。
これはまあ、とんでもないお話でした。図書館で借りたのはリンクにある文庫本版ではなく1987年初版の単行本で、ライラック色の表紙に白抜きでタイトル、着物の女性の上半身が輪郭だけ描かれているものです。Amazonにはなかったな。
この作品は1970年~71年に北海道新聞で連載された小説だそうだけど、だいぶ前衛的というか攻めの姿勢というか……
図書館の本なので貸し出し記録が残っていて(パソコン管理になる前のものだけのようですが)、私が生まれた直後の平成3年に始まり最後の日付スタンプは平成24年、少なくとも14人が同じ本を読んだことが分かって不思議な気持ちになります。
たぶん2日くらいで読み終わったと思うんですが、とんでもないお話でした(2回目)

。 

北大植物園で研究者として働く主人公・有津は、とある女性をずっと忘れられずにいたのですが、どれぐらい忘れられずにいたかというと、

妻と初めて接吻したときも、性の交渉をもったときも、あまり多くはない浮気の時にも、彼はその名を思い出した。

 
えっ。ちなみにこれは作品冒頭、わずか6ページ目。まるで既婚男性が浮気をするのは当然と言わんばかりでビックリします。時代ですかね。
この女性=佐衣子(=その名)が何者かというと、10年前に不妊に悩んで北大病院を訪れ、学生時代の有津が医学部の先輩に頼まれて精子を提供した相手、というこれまたなかなか驚きの設定です。
もうこの時点でいろいろツッコみたくなります。まず佐衣子の不妊治療を担当した当時医学部生の露崎。
三者精子を利用した人工授精は「非配偶者間人工授精(AID)」と呼ばれ、現在でも医療機関で実施されています。その際に利用される「非配偶者」の精子は学生ボランティアが提供する事も多いそうなので、露崎が有津に精子の提供をお願いしたことまでは納得がいきます。
その際、佐衣子の名前を有津に伝えてしまったことは、医学部生として絶対にやってはいけないことだったと思います。
露崎は産婦人科として開業したあとも中絶しにくる女性を罪人呼ばわりするなどまあひどいものです。
露崎の説明では「有津と同時に精子を提供してもらった2人、計3人の精液を混ぜて人工授精した」ということになっていましたが、実際生まれた子供は(話の中で直接的な表現はありませんが)有津と佐衣子の子となっています。
精子提供者の心的負担を軽くするために複数人の精液を混ぜる、50年前はそんなことが行われていたのでしょうか……

佐衣子に自分の精子が提供されたことに異常に執着していた有津は、ひょんなことから佐衣子と知り合い、接近を試みます。
具体的には、飛行機で隣の席になったのをきっかけに話しかけ、その後北大構内を散歩しているところを偶然見つけて話しかけ、デートの約束を取り付け、飲めないというのに酒を飲ませ、わざと子供の父親についての話をし動揺させたところで帰り際にキスをします。あ~最悪。
しかし不思議なことに佐衣子も有津を悪くは思わないようで、二人は何度かデートをし、あるとき有津は夕飯後に適当なことを言いながらタクシーに乗せ、ホテルへ運びます。これまた最悪。
佐衣子は小学生の子供がいるのですが、その子も一緒に3人で出かけたあとなど、

支笏湖へ行った日には体の関係はなかった。関係のない逢瀬は、有津にとっては逢ったことにはならない。

だそうで、いくらなんでもひどすぎます。仮に自分の好きな人がSNSで「ヤらなきゃ会ったうちに入らない」なんて言っていたらもうブチギレ案件です。
終始こんな感じで最終的に佐衣子が妊娠するのですが、自分大好き有津クンは「佐衣子のタイミングはわかっていた、勘で外すはずはないと思っていたが…失敗した」「あの時とは違う、愛をもって生まれた命…」なんて思いながらも世間からの目を恐れて「諦めてくれ」と堕胎を要求します。
最終的に佐衣子は実家の母に勧められた縁談を受け、再婚を決意して有津と別れる場面で物語が終わります。
最初から最後まで有津の身勝手さに引くのですが、風景描写や心理描写がきれいで、読んでいくのは楽しかったです。ないわ~と思いつつ他の渡辺淳一作品も読んでみたくなってしまいます。

いやはや、衝撃的な本でした。
明日からまた1週間頑張ります!